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東京高等裁判所 昭和26年(ネ)2175号 判決 1952年3月28日

控訴人 日本国有鉄道機関車労働組合

被控訴人 日本国有鉄道

主文

本件控訴はこれを棄却する。

当審で拡張した仮処分の申立及び中間判決を求める申立はいずれもこれを却下する。

当審の訴訟費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は、一、原判決を取り消す、被控訴人は、控訴人が被控訴人所属の機関車関係職員のために団体交渉を行うに適当な単位の決定を受ける仮の地位にあることを認めよ、訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする、との判決を求める。二、右のような仮の地位を定める判決がえられなかつたときは、予備的に、被控訴人は、控訴人が控訴人所属の組合員のため団体交渉を行うに適当な単位である仮の地位にあることを認めよ、との判決を求める。なお、三、次のような中間判決を求める。(一)被控訴人は、被控訴人所属の機関車関係職員又は控訴人組合のため、団体交渉を行うに適当な単位を決定することは適法であることを確認せよ。(二)被控訴人は、控訴人組合が団体交渉権を有すること並びにその団体交渉権をその欲しない第三者に行使させることを強制せられない権利あることを各確認せよ。(三)被控訴人は、控訴人所属の控訴人組合員を含む機関車関係全職員の集団が、団体交渉を行うに適当な単位であることを確認せよ。(四)被控訴人は、控訴人が被控訴人と協議して、被控訴人所属の機関車関係全職員のために団体交渉を行うに適当な単位を決定しうる地位にあることを確認せよ。(五)被控訴人は、団体交渉を行うに適当な単位を決定するにつき、控訴人組合以外の組合又は控訴人組合員以外の職員の意向に拘束せられることなく、自由に控訴人組合と協議決定する権利あることを確認せよとの判決を求める、と申し立てた。

被控訴代理人は、控訴を棄却する、との判決を求める。なお、控訴人の中間判決を求める申立は、独立した攻撃又は防禦の方法に属しない事項について中間判決を求めるものであるから、不適法として却下する、との判決を求める、と申し立てた。

当事者双方の各代理人は、事実関係につき、原判決の事実摘示とおり、原審口頭弁論の結果を陳述したから、ここにこれを引用する。なお、各代理人は当審において、それぞれ次のとおり事実上及び法律上の陳述をして、原審における各主張を補充した。

控訴代理人が当審において補充した陳述。

第一(昭和二十六年十二月二十四日附準備書面、第一回)

一、(機関車労働組合結成準備会の性格)

控訴人の前身として、本件仮処分命令を申請した機関車労働組合結成準備会(以下機労準備会と称する)は、名称は準備会を冠するも、その実体は、労働組合に外ならない。

およそ、労働組合とは、労働組合法第二条に規定する通り「労働者が主体となつて自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体」であつて、同条第一号乃至四号の欠格条項を有しないものをいうのである。

これを細説すれば、労働組合の概念要素は、

第一に、労働者の組織する団体、又はその連合体であること。

第二に、その団体は労働者が主体となつて自主的に組織するものであること。

第三に、その団体の主たる目的が、労働者の労働条件の維持改善、その他労働者の経済的地位の向上を図ることに存すること。

の三点である。

機労準備会の母体たる国鉄労働組合機関車協議会(以下機協という)は、単に国鉄労働組合(以下国鉄労組という)内部に於ける職能別協議会たる諮問機関たるに過ぎないから、独立した労働組合であるとはいえないが、機労準備会は、昭和二十五年十一月十五、十六日の飯坂における全国委員会で結成せられ、目的、組織、役員等が決定した。そのここに至つた理由は、国鉄労組が、職場環境と労働条件を異にする職種別組合員の切実な経済的要求を無視して、地域別組織を基盤とする政治的権力闘争に専念し、理由なく機関車関係職員のために、被控訴人と団体交渉を行うに適当な単位を設定することを妨害したことに由来するのである。

かくて飯坂における全国委員会において機労準備会が結成せられたのであるが、その目的たるや、さきに昭和二十五年五月温海における第四回全国委員会において決定せられた目的、すなわち、機関車関係職員が主体となつて自主的にその労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的とし、特に、その目的実現のためには、被控訴人と直接団体交渉を行うに適当な単位を設定することにあるのであつて、かような目的を明らかに確認して、かかる目的実現のために機労準備会が結成発足したのである。その役員、組織、権限等は甲第三号証の一掲記の通りである。

しかして、その準備会えの加入者員数、すなわち、組合員数は右飯坂における全国委員会当時は適確に把握せられていないが、機関車関係職員全員を組合員とする原則が確認せられ、公労法第十条による昭和二十六年度の単位決定のため、被控訴人に申入れをした昭和二十六年一月十八日当時においては、国鉄労組を脱退して準備会加入の機関車関係職員は、三千七百五十四名、同年一月末には二万三千百十四名、同年二月末には四万四百六十二名となつて優に半数を越えていたのである(甲第二十二号証)。

以上述べた、機労準備会の実体を懐胎、出生、生長生成発展の過程において把握観察するならば、機労準備会は昭和二十六年一月十八日当時においても、完全に国鉄労組とは別個の人格を有していた。労働組合法(以下労組法という)第二条に規定する労働組合の成立要素を具備していたのである。たゞ公共企業体労働関係法(以下公労法という)第六条に定める「公労法上の労働組合」としての要件を欠いていたにとどまるのである。

しかしながら、公労法第六条に定むる要件を欠いていることは、同法によつて労働組合として取扱われる利益を享受できないというにとどまるのであつて、その本質が労働組合であることを否定せられるものではない。

また、法人格を有せざることの故を以つてその実質が労働組合であるものが、その労働組合たるの本質を否定せらるべきでないことはいうまでもないところである(労組法第十一条参照)。

かような、法以前の社会的事実に着目して観察するならば、昭和二十六年一月十八日控訴人が被控訴人に対して単位決定の申入をなした当時の機労準備会は、少くとも単位決定の実現という目的の下にこの目的実現のために意思を決定実行する一定の組織を有する機関車関係職員三千七百五十四名による「人集」「団体」であることを断定することができるのであつて、その目的の範囲内において権利能力を有する労働組合であるといわなければならない。

これは、ちようど、胎児が出生以前において相続及び不法行為による損害賠償請求権に関し生れたるものと同一権利能力を有し、また、設立経過中の会社が胎児の地位にあつて、その目的範囲内において人格を有するのと同様である。

かりに百歩譲つて、機労準備会の実体を労働組合にあらずとするも、準備会加入の職員全部は、公労法第十条に定める単位の決定をうける資格のある適法なる、しかも、その内一部はすでに国鉄労組を脱退し、なお続々として脱退しつつあり、国鉄労組に自己の利益を代表せしめることを肯じない集団(公労法第十一条第二項の「集団」なる用語に留意せられたい)であることは一点の疑もない。従つて、被控訴人はこの機関車関係職員の代表者とは協議していないのである。

これを要するに、昭和二十六年一月十八日当時における控訴人の前身たる機労準備会は国鉄を脱退し、又は脱退しつつあつた機関車関係職員の集団であつて、かかる社会的事実に照らせば、控訴人は適法に昭和二十六年度の交渉単位決定を受け得る団体であるといわなければならない。

二、(単位制の違憲性について)

新しい日本国憲法は、国民の基本的人権の一つとしてその第二十八条において、勤労者の団結権と団体交渉権とその他の団体行動権とを保障した。この勤労者の三種類の権利は、法律をもつてしても侵すことのできないものであつて(憲十一条)、単に公共の福祉に反する場合にのみ若干の制限を受くるにとどまり、完全にこれを剥奪もしくは禁止し、又はほとんどこれに近い制限を加えることは許されない(憲十二条)。

しかるに、公労法は、公共企業体の職員について団結の自由は認めた(公労法第四条)が、団体行動については重大なる制限を加え「同盟罷業、怠業、その他業務の正常な運営を阻害する一切の行為」を禁止した(公労法十七条)。その代償として、「労働条件に関する苦情又は紛争の友好的且つ平和的調整を図るように団体交渉の慣行と手続とを確立する」ために、交渉単位制を設けた。この単位制によつて、公共企業体の勤労者たる職員は、団体交渉権を奪われたのでなく単にその実施権が、その単位所属の職員の排他的代表たる交渉委員を通じてのみ行使せられるのであると、一部論者は主張する。団結権についてはその自由が認められているから問題はない。団体行動権についても、同盟罷業その他の業務の正常な運営を阻害しない限り認められているものと解して、一応これを問題外とする。しかしながら、団体交渉権に関する公労法の右規定は、その解釈運営の仕方によつては憲法に違反するものである。

(1)  (団体交渉権の行使者)

団体交渉とは、組合又は勤労者の統制ある集団(以下単に組合と称する)が、使用者と労働協約その他の事項に関し交渉する権利をいい、労組法はその行使権者を組合の代表者又は組合の委任を受けた者と規定した(労組法六条)。このことは、団体交渉権を保障した我が国憲法上当然のことであつて、換言すれば、団体交渉権は、組合又はその組合員たる勤労者の信頼する代表者を通じてのみ行使されなければならないということであつて、反面からすれば、組合又は組合員たる勤労者の信頼せざる、もしくは欲せざる代表者に団体交渉権の行使を強制せられるならば、それは団体交渉権の制限でなくて、その、完全なる剥奪否認を意味する。従つてもしも、公労法第十条及び第十一条第一項の規定をもつて、単位内に数組合又は組合と非組合員とがならび存する場合において、これを一個の単位とし、その主たる一組合の代表者をもつて交渉委員とした場合、他の組合又は非組合員の団体交渉権は認められているが、単にその行使権のみが、その欲せざる場合においても、主たる一組合の代表者たる交渉委員に与えられるに過ぎないと解するならば、それは明かに憲法に違反するものである。

論者或はいうであろう。単位制はアメリカにおいても認められていると。しかしながらアメリカの憲法には団体交渉権は保障されていないから、憲法違反の問題が起らないのみならず、単位制を規定したタフト・ハートレー法においても、その第七条で「労働者は自主的に団結する権利、労働組合を結成し、これに加入し又はこれを援助する権利、自から選んだ代表を通じて団体交渉を行う権利及び団体交渉又は相互扶助のためにその他の団体行動に従事する権利を有する」と規定し、更に、単位制及びその交渉委員の排他的代表たることを規定した同法第九条(A)においては、但し書きを以つて、交渉委員を排除して行う少数者の苦情申立による調整権を認め、更に、同(B)において、単位を使用者別、職種別、工場別又はこれらの下部機構別のいづれにするかを決定するについては、「(1)ある単位に専門的労働者とそうでない労働者の両者を含んでいる場合、その単位が団体交渉のために適当であると決定するには、かかる専門的労働者の過半数がその単位に含まれることについて賛成投票を行つた場合でなければならない。また、(2)種別単位が団体交渉のために不適当であると決定するためには、以前委員会がそれと異つた単位を決定したという理由では不十分であつて、その職種の労働者の過半数が自分等だけの代表には反対である旨、投票した場合でなければならない。」と詳細を極めた規定を設けて、専門的労働者又は職種別労働者の投票による過半数を要件として、その権利の保護を十分ならしめている。その上、アメリカの労働者は、かかる投票手続による過半数の決定には服従するという長年の慣行によつて、その意思を表明し、この制度を支持して来たのである。

(2)  (公労法第十条の協議の意義)

しかるに、わが国公労法は単に第十一条第二項の規定を設けたにとどまり、他は総じて当事者の協議(同法第十条)又は労働大臣の自由裁量(同法第十一条)にゆだねている。この規定をもつて、当該専門的労働者又は職種別労働者の意思を無視し得るものの如く解するならば、これ正に憲法第二十八条に違反するものといわなければならない。

これを本件の場合についていえば、機関車関係職員という専門的労働者又は職種別労働者の過半数の意思は、単位の決定については、常に、絶対的決定的要素たるものであつて、換言すれば、被控訴人たる国鉄公社は機関車関係職員又は控訴人が公労法第十条の協議により、機関車単位の決定を申出ないか、又は全国単一単位に包含されることを承諾した場合にのみ、機関車単位を設定しないことに決定し得るのであつて、いかなる場合といえども、その意思に反しては機関車単位を否認することはできないのである。

しかるに、前述一、記載の如く、本件昭和二十六年度の単位決定の申入れをした昭和二十六年一月十八日当時、機関車関係職員で国鉄労組を完全に脱退した者三千七百五十四名、同年一月末には二万三千百十四名、二月末には四万四百六十二名と、優に半数を超えているのである(甲第二十二号証)。

しかのみならず、機関車単位を要求することは、国鉄労組からの脱退を欲せざる者(現国鉄労組新機協残留者)をも含めて殆んど全機関車関係職員の一致した要望である。

すなわち、公労法第十条の協議とは、我が憲法上保障された団体交渉権行使の基礎となる単位を決定するに当り、その当事者が組合又は組合と同視さるべき同価値の統制ある非組合員の集団が団体交渉権あることを確認するか、乃至は、その団体交渉権を有する組合又は非組合員の団体交渉権の行使を、他の組合と併合して単一の単位とすることが、「公共企業体の正常な運営を最大限に確保し、もつて公共の福祉を増進し擁護することを目的とする」その目的の達成のために、好ましいと考えられた場合に、「公共企業体の職員の労働条件に関する苦情又は紛争の友好的且つ平和的調整を図るように団体交渉の慣行と手続を確立」するに至ることを期待して(公労法一条)、その組合又は非組合員の譲歩の承諾を求める話合をいうのである。従つて、本件の場合についていえば、機関車単位なるものは昭和二十六年度に関する限り、機関車関係職員の過半数否ほとんど全員の要望(国鉄労組脱退の有無にかかわらず)によつて明らかであるから、客観的には当然存在したのであり、被控訴人は協議によつて、その事実を明らかにせんとする控訴人の説明を、その提出する資料に基いて理解し、機関車単位を確認するか、然らずんば、全国単一単位を必要とする理由あらば資料に基き詳細その理由を説明して、控訴人の承諾を求むべきであり、かかる目的のため、一定の場所に双方の代表者が面接して話し合いをすることが公労法第十条の協議である。

(3)  (単位の客観性)

しかるに、公労法の単位とは同法第十条のいわゆる協議によつて初めて無から有を生ぜしめる如くに設定し得るものであると主張するものありとせば、それは誤りであつて、前述の如く単位とは団体交渉権を行使する際、その交渉委員が公共企業体所属の職員のいかなる範囲を代表するかを決定する基礎となる職員の範囲を指称するのであつて、その団体交渉を行うに適当なる単位なりや否やは、その職員の集団が単位を要求する意思ありや否やの主観的要件並びに「その職種、資格、経験、義務、賃金、労働時間及びその他の労働条件において利害を同一にする」か否かの客観的要件によつて、客観的に決定されるのであつて、公社側の主観的意欲によつて左右されるものではないのである。しからずして、単位は職員側の客観的要件の有無にかかわらず、常に公社側の任意勝手な意欲によつて、無から有を作り出し又は有を無たらしめ否認し得るものであると解するならば、それは公労法そのものが憲法に違反するか、又は少くともそのかくの如き解釈は憲法に違反するものといわなければならない。

(4)  (予備的請求について)

なお国鉄労組に残留する機関車関係職員(新機協)のほとんど大部分については、本来ならば、控訴人と合体した単位を要求してをり、かつ公労法第十条所定の単位たるべき客観的要件をそなえているのであるから、控訴人の本件訴訟において請求する単位内に包含さるべきものであると信ずるが、現に国鉄労組に残留するとの一事によつてその単位要求の主観的要件において幾分稀薄なるものありと認めらるるならば、これを除外して、控訴人組合のみをもつて交渉単位であるとし、本件処分もこれに照応する仮の地位を認められたい。

三、(債権者としての控訴人の請求)

(1)  (債権者代位権行使の主張)

なお以上の主張が総て理由がないとしても、昭和二十六年一月二十三日の被控訴人と国鉄労組との単位決定の協定において、「やむを得ない事情のあるとき((I)公社側に変更のあつたとき。(II)組合側に変更のあつたとき。(III)機協問題が解決したときを意味する)は改めて協議する」、という附属諒解事項のあつたことは、被控訴人の認めるところであつて、右諒解は、控訴人が被控訴人に単位の決定を申入れ中、国鉄労組が控訴人をも代表する資格ありとして控訴人の債務者として行つたものであるから、控訴人は自己の権利を保全するために、右諒解に基く国鉄労組の被控訴人に対する昭和二十六年度単位変更請求権を代位して、被控訴人に対して、機関車関係職員のため、又は、予備的に控訴人のため、同年度の単位を決定すべきことを請求する。

(2)  (第三者のためにする契約の第三者としての受益の主張)

右(1)の主張が理由がないとしても、被控訴人と国鉄労組との右の(1)諒解は第三者たる控訴人のためにする契約であるから、控訴人は被控訴人に対して、受益の意思を表示し、同年度機関車関係職員又は控訴人のため単位決定を請求する。

第二請求の原因について(昭和二十七年一月十六日附準備書面、第二回)

一、甲第四号証昭和二十六年一月十八日附昭和二十六年度単位決定の申入れ当時の控訴人の前身たる機労準備会準備委員の国鉄労組脱退年月日は次の通りである。

氏名    国鉄労組脱退年月日

石郷岡義一 昭和二十六年三月三十一日

瀬戸敏夫  同日

北野隆   同日

平田幸雄  同年二月十五日

加川重雄  昭和二十五年十一月三十日

渡辺喜一  昭和二十六年一月三十日

兼高隆   同日

吉田孝治  同日

二、機労準備会は、当時国鉄労組と機関車単位決定のために話合い中であり、役員が同労組を脱退すればそれに関する発言権を失うおそれがあつたので、機関車単位を認めさせるために、作戦上から形式上の脱退を留保していたものである(疎明省略)。

第三中間判決を求める申立の請求原因(昭和二十七年三月一日附準備書面、第三回)

本件訴訟において、控訴人は、被控訴人に対し、控訴状「請求の趣旨」及び当審第一回準備書面「請求の趣旨の予備的追加申立各記載の如き各終局判決を求め、右各請求は、いずれも昭和二十六年度の単位に関するものであるが、当事者双方の主張が著しく多岐複雑に亙り、これらすべての争点について主張を整備し、立証を尽し、審理判断を得て昭和二十六年度の終期たる昭和二十七年三月三十一日までに終局判決を得ることは、訴訟進行の現状に照し困難と認められる。しかるに、昭和二十七年一月十四日に開始された当事者間の昭和二十七年度単位決定のため協議は、すでに五回を重ねてなお、停頓状態にあるが、(甲第二十八号の一ないし五)、その主たる原因は本訴訟において主張する昭和二十六年度単位が決定しないこと、並びにその前提となる当事者双方の争点の正否が解明せられないためであるが、昭和二十七年度単位は、遅くも本年三月二十五日までに決定されなければならないから、本件訴訟において終局判決を為すに熟しないとしても、その前提となる争点中、独立したる攻撃又は防撃方法で重要なるもの(右中間判決を求める請求の趣旨に掲げたもの)について判決をなすに熟したものについては、速かに順次中間判決あらんことを申立てる。かかる中間判決を求めるゆえんは、一般に機関車単位を決定する正当なる理由あることを、本年三月三十一日までに、被控訴人をして確認せしめたいためであつて、このことは、本件仮処分申請の前提である控訴人組合員を含む被控訴人所属の機関車関係職員の労働条件確保のため、緊急の必要と利益を有するものである。

以下中間判決を求める請求の理由について各別に述べる。

一、中間判決を求める請求の趣旨、第一項について

(一)  機関車単位の決定は公共の福祉に反しない。

被控訴人は、当審答弁書の第二において、「控訴人の機関車関係職員又は控訴人組合をもつて交渉単位(以下機関車単位と称する)を設定(設定という表現は本来存在せざる単位を形成せしむるが如き印象を与えるが故に適切でない、公労法第十条により決定の用語に従うべきものである)せよという主張は交渉単位制度の目的に反し失当である」とし、その(2)において、「すべての労働者に一般的に適用される労働条件は画一的、統一的に定められることが望ましい」として、「そうするには、労働条件を定める労働協約が一つであること、換言すれば団体交渉の当事者が労使双方共一つであることが必要」である。換言すれば、被控訴人所属職員の単位は一個に限ることが必要であるとし、このことは「労働者にとつては労働戦線の統一となり、又使用者(即ち、被控訴人)にとつては同一内容の労働条件について組合ごとに団体交渉をする煩雑がなくなり、双方の利益となり、ひいては団体交渉の促進と円滑化を図る結果となる」と主張する、すなわち、被控訴人の主張は、機関車関係職員に固有の問題については、控訴人と団体交渉の必要を認めながら、職員全般の共通問題については、機関車単位を認めることは「煩雑」であるとして、全職員を単一の単位とする「この目的に反するような交渉単位の設定を相手方に要求することは、不当な要求といわなければならない」、という主張に帰着する。このような被控訴人の主張は、共通問題について二重の団体交渉をすることは、「煩雑」面倒であるとし、「公労法はこのような煩雑を避ける目的のために生れたものである」とし、「この目的に反するような(機関車)交渉単位の設定」は許されないとする。

しかしながら、民間企業体においては、一企業体に数組合の存することは枚挙に暇がないが、その場合でも共通事項は存するが、いずれも当事者間の信義、誠実の原則と利害打算その他、力の均衡等によつて、公共の福祉とは関係なく、各組合独自の団体交渉の実効範囲は自から合理的に制禦されている。

本件の場合においても、国労単位と機関車単位を認めたからといつて、必らずしも共通事項について、常に二重の団体交渉をしなければならないとは限らないのであつて、双方に単位を決定した後において共通事項の処理方法を協定するは不可能ではないし、仮りにかかる協定が成立しなかつたとしても、公社と組合員間においては公労法に対して普通法たる労組法第十七、十八条の規定が適用されるから(この点については少数の消極説はあるが通説及び判例はこれを認める)実際上においても、控訴人組合が機関車関係職員の四分の三以上を占めた場合は、公社の運営を阻害するおそれはない、更に進んで、公社において仮りに二重の団体交渉をしなければならないとしても、この不便は団体交渉権を保障したわが憲法上、すべての企業主に課された当然の負担であつて、公共企業体といえどもこの負担を回避することは許されないのである。

この場合、公共企業体には、その意思により、一単位でなければならないとする権利ありとの主張は、要するに、便宜論の範囲を出でないものである。公社の便宜すなわち公共の福祉であるとはいいえないことは、何人も異論のないところであつて、この点に関しては、アメリカにおいても言論の自由と公共の福祉との関係についてそれは社会的利益が真に危殆にひんする場合のほか制限することができないとして「明白かつ現存の危険の原則」が明らかにせられ、「単なる公共の便宜のため民主政治の維持に絶対必要な基本的権利である言論の自由を制限することはできない」とされていることは、本件を論ずる場合においても注目さるべきである。すなわち、公共の便宜と公共の福祉とは全然別個のものであるといわなければならない。

(二)  単一単位は、労働戦線の統一又は労働者の利益となるということは、理論的にも肯定できないと共に、国鉄労働戦線の現実に即しない。

単一単位の決定により、労働戦線の統一と労働者の利益が守られるとする被控訴人の主張は、抽象論としても必ずしも肯定できないばかりでなく、具体的に国鉄労組と控訴人組合との関係においてみるも妥当しない。すでに述べたように、国鉄労組は平和四原則等政治権力闘争に重点をおき、控訴人組合は組合員の経済的地位の向上に重きをおく等、互いに氷炭相容れないイデオロギーを有し、これを強いて一個の単位に拑入しても、現在以上にその戦線を統一し得る望みなきはもちろん、控訴人組合の経済的技術的要求はほとんど圧殺せらるる結果、相互の反目は激化し、控訴人組合員はもとより、機関車関係職員全般の経済的利益は無視せられ、ひいては国鉄労働戦線はかえつて收拾すべからざる混乱におちいり、ひいては国鉄全般の円満なる業務の遂行すらも期待し得られないおそれがある。

(三)  機関車単位は公労法第一条の目的に反しない。

公労法は単なる公共の福祉なる観念を以つて単位制を期待しているのではなく、同法第一条の趣旨目的の実現に沿うべきことをもつて立法されたものである。同法第一条によれば、窮極においては「公共企業体の正常な運営を最大限に確保し」、「もつて公共の福祉を増進する」ことを目的としているのである。

しからば、機関車単位を認めることと認めないことによつて、そのいずれが「公共企業体の正常な運営を最大限に確保」することができるか、又、よつてもつて「公共の福祉を増進すること」ができるかについて検討する。

機関車関係についていえば、国鉄の機関車すなわち、列車が公社の要求するような定時に正確、安全、能率的に運行されることがすなわち「正常な運営」が「最大限に確保」されることであり、その能率の向上することが、すなわち「公共の福祉を増進する」ことである。

機関車単位を決定することにより、機関車関係職員は、自主的団体交渉権を確保したという単なる精神的利益のみによつてすら、その能率を向上し得ることは条理上当然のことであるが、更に石炭節約運動の例に見るが如く(申請書三の(6)参照)、双方の団体交渉によつて、双方の経済的向上を実現し得るならば、公社の「正常なる運営を確保」し得るのみならず、一層「公共の福祉を増進」し得ることは明かである。

反対に、被控訴人の主張する如く、控訴人の意思に反して国労と合一したる一個の単位のみを決定された場合においては、控訴人組合の真剣な経済的技術的要求が圧殺せられ、団体交渉の機会も調停仲裁を受くる機会も、法的には保障せられない結果となるにおいては、機関車関係職員の希望は殆んど失われ、職場における勤勉努力望むべきもなく、ひいては列車の正確にして能率的な運営は阻害されるか、ないしは、少くとも能率の向上は期待し得られず、結局公共の福祉の増進はもとより、現在の公共の福祉すらも害される結果となることは、これまた条理上当然の帰結である。

二、中間判決を求める請求の趣旨、第二項について

被控訴人は、当審答弁書の第三において「交渉単位制は憲法に違反しない」とし、控訴人の当審第一回準備書面の二(単位制の違憲性について)において主張したところ「総てが不確定な仮定事実を前提としての主張である」としているが、控訴人が右準備書面で主張したことは単なる仮定論でなく、被控訴人の従来の弁論の全趣旨により、又将来、被控訴人が答弁するであろうと予想される主張に対して予めはんばくしたものである。現に被控訴人は当審答弁書において前述のように単位は、「一つであることが必要である」とか、「この目的に反するような交渉単位の設定を相手方に要求することは不当」であるとかいつて、結局は、控訴人の本件機関車単位決定の請求を拒否し、単位の決定については、控訴人の「意思を無視し得るものの如く解し」、又、「交渉単位を公社側の恣意的意欲によつてこれを無から有を作り出し、又は有から無たらしめ否認し得るものである」換言すれば、機関車単位は客観的には存在せず当事者双方の協議によつてのみ形成されるものであつて、被控訴人はこれを形成するか否かの自由の権利を有するかの如き主張をしているのである。控訴人はこのような被控訴人の主張に対して、前記の如く憲法論上の主張をしたのであつて、決して単なる仮定論ではない。被控訴人の前記「交渉単位制は憲法に違反しない」との主張を検討するに、被控訴人は前述のように、控訴人の周到なる理論的主張に対して、単にこれを仮定論なりと仮定して、消極的に否定するのみであつて、積極的に被控訴人の主張の如き公労法の解釈運用が、憲法に違反しない理由を述べていない。

控訴人は、憲法第二十八条の規定する勤労者の団結権、団体交渉権は、国民の基本的権利であつて、本件において訴求する交渉単位は右憲法の保障する団体交渉権の具体化に関するものであるから、憲法第十二条に規定する通り「不断の努力によつてこれを保持し」ようとして、前述の如く詳論したのである。

しかして、憲法に保障する国民の基本的人権を制限するための正当なる理由は、「公共の福祉に反する」との「明白かつ現存の危険」が認められ、国家の社会的利益が真に危殆にひんすることを論証し得た場合にのみに限られるのである。しかるに、この点に関する被控訴人の答弁は、前に指摘したように、単に言語上において「交渉単位制は憲法に違反しない」と主張するにとどまり、機関車単位の公共の福祉に反すること並びにこれにより社会的利益の真に危殆にひんするとの明白かつ現存の危険の存在することについてはなんら言及するところのないものであるから、理由なきものである。

以下中間判決を求める請求の趣旨第二項について、その理由を詳論すると共に、被控訴人の主張について実質的にはんばくする。被控訴人の主張は、公労法第十条の単位に関して控訴人組合の意思如何に拘らず、控訴人組合員をも包含した被控訴人の職員全体を一単位となし、公労法第九条の交渉委員は、控訴人組合その他の組合の組合員及び組合に加入していないで加入できる資格を有する職員のそれぞれの数に比例して選出し、これらの交渉委員によつて、構成せられた交渉委員会によつて、被控訴人と交渉するという運営方法によることは、公労法の解釈としてもまた憲法第二十八条の解釈としても、適法であるという見解に要約できるが、念のためその誤れるゆえんを左に指摘したい。

(一)  (団体交渉権の意義)

憲法第二十八条において団結権と竝んで団体交渉権を保障するのは、一方において、団結権が労働者による労働組合の結成、労働組合への加入ないしは労働組合の存続を保障することと相並んで、他方において、団体交渉権によつて、労働組合がその目的活動をなすことを保障しようとするに外ならないのである。

この労働組合の目的活動を保障するということは、具体的にいうならば、国家が労働組合に対して交渉の自由を制限してはならぬということ、なかんずく協約を締結する地位を拒否してはならぬということである。いいかえれば、労働組合の協約能力を制限したり、或は否定することを許さないという意味である。これが否定ないし制限をなすことが許されるのは、憲法第十三条の要求する公共の福祉を保持する必要がある場合にのみ限られるのであつて、したがつて、元来協約によつて定め得べき事項を別の機関をして決定させることは、それがたとえ、法律の定めによる場合であつても、公共の福祉保持の必要のなき限りは、右法律の定める内容が実質的に組合の協約能力を有名無実ならしめる場合には、団体交渉権の保障に対する違反と解さなければならない。

元来、団体交渉ということは、労働組合にとつて、基本的活動であつてかような重要な活動を組合の統制下に立たない第三者に委すということは、団体交渉の本質に相反するものといわなければならない。

また、労働協約は、これによつて組合員の労働力をその協定の線に沿うて、コントロールするものであるから、協約締結のための交渉が組合員以外のものによつて行われることは、たとえ協約の締結が、最後的には例えば組合大会における承認というような組合員の団体的意思に問われるとしても、労働組合の本質ないし組合活動の本質とむじゆんするものである。いわんや、組合自体が明らかに委任することを欲せざる第三者によつて団体交渉をすることが許されるという見解は、団体交渉の本質を誤解し、憲法の保障する団体交渉権に対する解釈を誤るものといわなければならない。

さて、公労法第八条以下は、公共企業体における団体交渉のあり方、協約締結の方法に関する基本的原則を規定しているのであるが、またそれのみにとどまるのである。団体交渉のあり方、協約締結の方法の細目は、当事者双方の協議に委ねられるとはいえ、その協議の前提となる双方の考え方は、前述の如き団体交渉権に対する憲法の保障をじゆうりんするようなものであつてはならないのである。

もし、被控訴人の説くように、被控訴人の職員全体を一つの交渉単位とし、交渉委員は各組合員及び他の職員の数に比例して選出し、これによつて構成される委員会が被控訴人と交渉するという方法によるならば交渉委員会における運営が民主主義原理から当然、派生する多数決の原理に支配される結果、交渉委員会の過半数を占める国鉄労働組合を基盤とする交渉委員の意思によつて支配運営され、国鉄労組の意に沿わない控訴人の意思は、常に圧殺さることはきわめて明らかなところである。したがつて、控訴人組合はその欲せざる、かつまた、自己の委任せざる第三者によつて協約締結のための交渉が行われることになる。

かかる交渉は、団体交渉の外形を帯有するにとどまり、いささかもその実を備えざるものであつて、控訴人組合自体としては独自に交渉する自由を制限され、むしろ剥奪されたことになるのである。

かような状態は、実質的には控訴人組合に対し組合としての基本的活動を封殺し、協約能力を有名無実ならしめるものであつて、さかのぼれば、労働組合としての本質を否定することになるのである。

したがつて、公労法第九条以下の規定を解釈するに当つて、右に指摘したような被控訴人の見解にしたがうことは、明らかに憲法第二十八条に違反した解釈というべく到底容認することを得ない。

(二)  (適当なる交渉単位の最低線)

公労法第十条により協議決定せらるべき単位は種々考えられるとするも、以上論じたような理由によつて少くとも、前段述べたような意味においての労働組合の存在並びにその基本的活動たる協議締結能力を否定しない程度のものであることが、最低の限界線として要請されるわけである。

しかして、その最低限界線たるや、本件について論ずるならば、控訴人組合そのものを、その組合員のため独立した一の単位として認定すること以外には考えられないのであつて、かかる控訴人の権利ないし地位は、公労法第十条の協議の成否如何にかかわらず国家権力をもつてしても否定することのできないものである。

三、中間判決を求める請求の趣旨第三項について、

被控訴人は、当審答弁書の第二の(1)において、控訴人組合に所属する各種職名、賃金、労働時間の相違につき詳説し、その同一でないことを理由に控訴人組合が職種組合(クラフト・ユニオン)でないとし、それ故に機関車関係職員又は控訴人組合をもつて団体交渉を行うに適当なる単位たるに適しないと主張した。しかしながら、このような主張は公労法に言う職員又は職員の集団の意義を誤解したものであつて正当でない。

公労法第十条により協議決定せらるべき適当なる交渉単位は種々考えられることは、前段において言及したところであるが、その種々考えられる適当な単位の中被控訴人公社の「職員の集団」を「労働組合」という観点において考えるならば、控訴人組合が被控訴人公社所属の機関車関係職員中、控訴人組合に属する者のために被控訴人と団体交渉を行うにつき最低限度において適当な単位であることについては前段で詳論した通りである。

これを角度を変えて、「労働組合」という観念を一応捨てて公労法のいう「職員」乃至「職員の集団」(同法第九条第一項、第十条、第十一条第一項、第二項等参照)という観点から適当な単位を考えてみるならば、公労法の意図する適当なる単位は機関車関係職員に関する限りは、前段主張の如く、控訴人組合、それ自体を単位として決定するのでない限りは、控訴人組合を構成する機関車関係「職員の集団」全部を措いては他に考えられないのである。

この趣旨は、公労法において明白に法文化されているところでもある。即ち、同法第十一条は、交渉委員の選出がなされなかつた場合において、労働大臣が必要な措置を執り得ることを規定したものであるが、かかる場合において、労働大臣は、まず、適当なる単位を決定すべきことを法律上要求されており、しかも、右の単位を決定するに当つては、その種類、資格、経験、義務、賃金、労働時間及びその他の労働条件において(同一なることを要件とするのではなく、)利害を同一にするよう考慮を払うべきものとされているのであるから、かかる基準を無視しては労働大臣すら自由に単位を決定することは許されないのである。右単位決定の基準は被控訴人の主張するような職名、職種、資格、経験、義務、賃金、労働時間及びその他の労働条件の画一的、同一性ということではなく、それらにおける利害の同一性ということが唯一の基準である。しかもかかる基準は絶体的観念としては存在し得ないのであつて、どこまでも、単位決定の時における現実に照応して妥当と認める相対的観念でなければならないのである。すなわち、主として機関区という同一工場職場を共にするという立場からすれば、控訴人組合は一つの企業組合(インダストリヤル・ユニオン)ではあるが、国鉄職員全般から見れば同種の職種の者のみで組織する一つの職種組合(クラフト・ユニオン)であるということができるのである。かかる意味における基準による法規的拘束力の範囲内において(当審第一回準備書面二の(3)、控訴人が単位は客観的に存在すると述べたのは、かかる法規的拘束力の存在を指したのである)、初めて適当なる単位を決定することが許されるのであつて、かかる法規的拘束力を無視することは許されないのである。

よつて、機関車関係職員の集団がその職種、資格、経験、義務、賃金、労働時間及びその他の労働条件において利害を同一にするか否かについて、更にこれを詳論すれば次の通りである。

(一)、(職種、資格、経験における利害の同一性)

その各職名の異るものにおいても互いに資格、経験、知識、について相互に或は共通し又は熟知することを要し、且つ熟知しており、一方の欠格は他方の業務の遂行に支障を生じ、且つ、機関車関係職員は機関区に就職の初めは通常庫内手を拝命し、順次一部中間級の職を経て乗務員系統に昇進し、又は技術、機関車検査掛等検査修繕関係職に進出し、或は管理部門に至る等相互に密接なる利害の同一性を帯有しているものである。

(二)、(義務の同一性について)

機関車関係職員特に機関区職員は限られた時間内に機関車を掃除し、整備し、石炭と水の補給積込を行い、所要の運転補修資材等を補給し、機関車の整備補修並びにこれが検査、検修を遂行し、安全にその機関庫の出入をし、もつて正確、迅速、安全なる列車の運転に寄与しているのであつて、その一部の義務懈怠は直ちに他の業務遂行に支障を招来する等緊密に相関連する一種特段の連帯義務を負うものであつて、この点において、他の国鉄職員とは格段の差異ある利害の同一性を有するものである。

(三)、(賃金の利害の同一性)

機関車関係職員の義務(責任)資格、経験(経歴)に関する利害の同一性、関連性からその各賃金についてもその利害を同一にすることは当然であつて、このことは日本国有鉄道法第二十八条第一項の明記するところでもあり、控訴人はかかる特異なる利害の同一関連性あるが故にこそ、その賃金が、被控訴人の主張するように、「蒸気機関車乗務員がトンネル内機関車乗務手当の支給をうける外は、賃金体系においては控訴人組合の組合員も(正確にいえば機関車関係職員も)その他の国有鉄道職員も殆んど同一であつて、控訴人組合の組合員(すなわち機関車関係職員)のみが、他の職員と異る賃金制度をうけるということはない」という現状を不満として、国鉄労組から分離して別個の労働組合を結成し、別個の単位を要求しているのであつて、被控訴人の主張は結局あるべき姿と、ある姿とを混同した議論であつて、本末をてんとうしたものである。

(四)、(労働時間、その他の労働条件及び職場環境における利害の同一性)

職責義務の同一牽連性及び職場環境の同一性から機関車乗務員の労働時間の些少の差異(利害の差異ではないことに留意)にもかかわらず、その利害もまた相関連し同一にしていることは自明の理である。

(五)、(乙第四号証について)

乙第四号証はその内容において不正確であり、公的権威あるとは認められないから否認する。すなわち乙第四号証の二の区長、支区長、事務助役、技術助役は非組合員であり、電車運転士、副電車運転士見習、電車運転士見習、電車運転助士、電車検査掛、客車検査掛、電車掛、車輛掛、車輛手、整備世話掛は機関車関係職員ではない。又、乙第四号証の三の区長、支区長、事務助役、技術助役は非組合員であり、電気機関士、副電気機関士、電気機関士見習、電気機関助士、副電気機関助士、機関車検査掛は機関車関係職員である。かかる混乱は、富士電車区及び仙台電車区は「電車区」の名称を冠するも、実質は機関区と電車区との並存するところであつて、乙第四号証の一の仙台電車区及び静岡富士電車区においては、一部各機関車関係職員にあらざる名実共に電車区関係職員の一部が控訴人組合に加入しているのは、一つは、国鉄労組のあり方にあきたらざると、他は、職場を共にするための労務管理上の便宜から、控訴人組合に加入しているものであるが、機関車関係の全職員を以て単位を決定する際には、当然その単位に属し得ざるものであつて、機関車単位を決定するについては、なんらの障害となり得ないものである。又、乙第四号の一ないし四の挙示する数字は正確なものではない。

以上論じたように、機関車関係職員は、被控訴人所属の国鉄職員全般から見れば、その職種、資格、経験(経歴)義務(職責)、賃金、労働時間その他の労働条件並びに職場環境において利害を同一にするものであるから、仮りに、控訴人組合を以て組合員のみのための単位とすることが適当でないとすれば、前述機関車関係全職員を一体とした職員の集団をもつて、適当なる交渉単位として考えるほか、考えようがないのである。

四、中間判決を求める請求の趣旨第四項について。

前記第三に述べたように、被控訴人所属の控訴人組合員を含む機関車関係の全職員が、公労法上の交渉単位たることの適格性あることは明らかであるから、この意味の機関車単位を被控訴人の相手方として協議決定する地位にあるものは、控訴人組合であるか、控訴人組合に属しない機関車関係職員であるか、そのいずれかの一方または双方であるか、について述べる。

しかして、右被控訴人と前二者の三者が鼎坐して協議する必要のないことについては次の第五において詳論するから、残る被控訴人との協議決定をなすべき地位にあるものが控訴人組合なりや、控訴人組合に属しない機関車関係職員(国労の機協)なりや、について論述する。

この点を論ずるに当つて留意すべきは、被控訴人の機関車関係職員約六万六千名中控訴人組合に属する者四万六千名を占め、控訴人組合に属しない者約二万名という事実である。そして公労法は、その第十一条第二項により定めらるべき単位に包含せらるべき職員が二個の組合に分属する場合の協議決定権をそのいずれの組合に委ねるかについては、アメリカのタフト、ハートレー法の第九条(B)のような詳細なる規定(控訴人の第一回準備書面二の(1)参照)を設けなかつたことは、法の不備としなければならないが、単位制度を設ける以上、その代表権者をいずれとするかについては、条理上前記タフト、ハートレー法の規定に即応して解釈すべきものであり、従つて、過半数の職員を有する組合の決定に委ねられているのであつて、そう解釈しなければ単位制度を設けたことは無意味に帰せざるを得ないのである。しかもわが公労法にはタフト、ハートレー法におけるが如き投票手続がなく、現実に二つの組合中、控訴人組合員数が絶対過半数を占め、控訴人組合に属しないものが絶対過少数であることが明白なる本件の場合は、機関車関係全職員による投票手続を行うことなく、その絶対過半数を占める控訴人組合が公労法第十条の協議については、その代表権を有すべきことは、公労法をもつて、普通法たる労組法に対する特別法と理解する限り、条理上当然の解釈というべきである。そして控訴人組合に属しない(機協)機関車関係職員の団体交渉権は、機関車関係全職員を以てする単位が決定した後においては、国鉄労組を通じての団体交渉以外においては、その利害を代表せしめ得ないというが如き特段の理由なき限り、公労法第十一条第一項による控訴人との協議による交渉委員の選任を通じて行使し得ることとしたものである。この意味において、控訴人組合は被控訴人との協議により、機関車関係全職員のための単位を決定する地位を有するものである。

五、中間判決を求める請求の趣旨の第五項について

被控訴人は控訴人組合と協議して機関車単位を決定する自主性を有する。即ち、本件についていえば、控訴人は被控訴人と国鉄労組との三者協議は望ましいものではあるが法的には、被控訴人は控訴人並びに国鉄労組と各別に協議することを要しかつこれをもつて足るのである。すなわち、被控訴人は国鉄労組の承諾なきことを理由として控訴人に機関車単位を決定することを拒否する理由なく、反対に国鉄労組が反対しても機関車関係全職員、或いは機労そのものを一個の単位とすることが、公労法第一条の目的に反しない限り、これを協議決定する自主性を有し、国鉄労組がこれを拒否し或いは介入する権利はないものである。

しかして、控訴人は機関車関係全職員を一個の単位として決定することが公労法第一条の目的に合し、かつ公労法第十一条第二項の立法の趣旨にも適合するから、まず、機関車関係全職員のための単位の決定を求めるのであり、控訴人組合はかかる単位の決定を受け得る地位にあるものと解すべきこと前述の通りである。

被控訴人においても、右控訴人の主張の通り、かかる単位を決定し得る自主的権利を有するのであつて、しかる後機関車単位の排他的代表たる交渉委員の選出については、控訴人並びに機協を代表する国労と協議をなせばよいのであつて、その協議がまとまらないで、控訴人のみが交渉委員を指名して労働大臣に届出たようなときに初めて国鉄労組は異議の申立をなし得るのである。異議の申立がなされなければここに右単位は確定し、異議の申立があれば同法第十一条の手続によつて労働大臣による機関車関係職員の投票手続が行はれ、公労法はその決定に関係者の承服することを期待しているのであるが、なおこれに承服しない者は、そのこれに承服し得ない特段の理由を主張して、最終的には裁判所に出訴し得るのである。

この意味の自主性は公共企業体に認められているのであつて、被控訴人は現在自らこの自主性を放棄し、国鉄労組の不同意に藉口して控訴人の主張を拒否しているに過ぎないのであつて、必要を生ずれば何時でも右のような自主性を主張するであろう。

しかしながら、右国鉄労組の機協所属職員全体の動向が適確に把握し得ないから、機関車関係職員全体を単位とすることが適当でないとすれば、控訴人組合を単位とすべしというのが、控訴人の予備的主張であつて、この主張は機協の属する国鉄労組においてこれに異議をさしはさむなんらの権利なく、控訴人と被控訴人との二者協議によつてのみ決定し得ることはきわめて明らかであつて、しかも憲法との関係において被控訴人においてもこれを拒否し得ない最低線である。

六、機労準備会準備委員の資格について

(一)  (被控訴人の答弁の矛盾)

被控訴人の当審答弁書の第一の(1)(3)において、甲第四号証昭和二十六年度単位決定申入書の署名者石郷岡義一外七名の上に機労準備会準備委員なる文字が冠してなかつたとの形式上の瑕疵を捕えて、(イ)「労働組合の実体を具備した『機関車労働組合結成準備会』より昭和二十六年度の交渉単位決定の申入のあつた事実はない」とか、「控訴人の主張するような集団ないし組合は存在しなかつた」とか、(ロ)「仮りに存在したとしても、控訴人が主張するような集団ないし組合は被控訴人に対して、その存在と協議に関与する意思とを被控訴人の知り得べき状態におかなかつたものである」とか、(ハ)控訴人すなわち「(申請人等、すなわち右石郷岡義一外七名)が果して『国有鉄道機関区全職員並びに管理局機関車関係職員』の総意を代表して単位決定の申入をしたかどうかは当時不明で」あるとか主張するが、この点については、控訴人が本件申請書の四(交渉単位決定の申入れの経過)の(1)において「申請人は昭和二十六年一月十八日準備委員石郷岡義一外七名の名を以て被申請人に対し、機関車関係職員のため公労法第十条による単位決定のための協議の申入れをした」と主張したのに対して、原審答弁書の申請の理由に対する答弁として、その第一の四において「四の事実中(2)のうち『申請人は何等協議せず』との点及び(3)と(7)とのうち『一回の協議を行われずなされたものである』との点並びに(6)のうち一回も協議することなくとの点は否認し、その余の事実はすべて認める」と述べ、口頭弁論においても右答弁書に基いて述べたものである。従つて、控訴人は原審において申請人すなわち当時の機労準備会が被控訴人に対して準備委員石郷岡義一外七名の名を以つてなした右単位決定の申入れを一旦自認しながら、当審においてこれを争うことは許されないのである。

(二)  (被控訴人の、機労準備会の存在及び準備委員に対する認識)

被控訴人公社には、職員局その下に労働課なる主管局課をおき、被控訴人職員及びその労働関係を取り扱い、所属職員の労働関係の情報を收集して、その主要なるものについては「週刊国鉄労働情報」を刊行しているが、その昭和二十六年二月十日発行の第八十五号には(イ)「石郷岡氏等八名は国鉄機関車関係職員を代表し、当局に『交渉単位』を申請………総裁之に回答」(同二〇頁)(ロ)国鉄の機関車協議会単独労組結成問題について(同二〇頁)(ハ)「国鉄の機関車労働組合結成の経過概要」(同二三頁)と題する記事を掲げている(甲第三十号証)のであつて、被控訴人は機労準備会が労働組合であるとの法律的見解は別として、機労準備会の存在すること右石郷岡義一外七名が機労準備会準備委員であつて、機関車関係職員を代表して単位決定の申入をしたことを知つていたものである。

(三)  (機労準備委員の代表する職員の範囲について)

申請書の三(国鉄機関車労働組合の結成準備の経緯)に述べたような経緯によつて、昭和二十五年十一月十五、十六日温海の機協全国委員会で出席委員六十名中四十六名の賛成をもつて、機関車労働組合結成準備会の設置及び「主体制確立の基準は機関車関係職員全員を原則」とすることを決議したのであるから、組合員の現実数は日時の経過と共に順次増大したのであるが、その主体制確立の基準としては「機関車関係職員全員」を以て目標としたのであるから、機労準備会は機関車関係全職員を代表すべきものと決定されたのであり、前記甲第四号証はこの代表権の当為内容を表明したものであつて、このことは多数決原理当然の帰結としても、又、前記第五に述べた通り、公労法上の単位制度決定の当事者たるべきものが控訴人組合たるべき点からみても、正当である。

(四)  (機労準備会代表者の資格について)

甲第四号証すなわち昭和二十六年一月十八日付控訴人の前身たる機労準備会代表準備委員八名から被控訴人に対する昭和二十六年度交渉単位決定申入書の署名者中、昭和二十五年十一月三十日脱退した加川重雄を除いては他は当時いづれも国鉄労組の組合員であつたということは、機労準備会としての単位申入の効力になんら消長を来たすものではない。

この点に関連して、原判決が「組合員は組合によつてその利害が代表されるので、組合の存する以上組合のほかに組合員と協議をなすものとするは、組合を協議者とした趣旨に副わないもの」との前提に立つて、従つて、被控訴人と訴外国鉄労組との間における単位の「決定が違法になされたものとは言えなく、また組合員である右準備会に属する職員に対し効力を有しない」とはいえないと判断している点は特に留意すべきである。原判決の右判断の前段の部分は仮りに肯認するとするも、原判決は事実を誤認し、かかる誤認事実に前段の理論をあてはめて後段の結論を導き出したのであるから、右判断には到底承服することはできない。すなわち、原判決は昭和二十六年一月十八日当時機労準備会所属の職員がすべて国労の組合員であつたという事実誤認をなし、かような事実誤認に基いて機労準備会が国労の内部機構に過ぎず、権利能力がないものという誤解をしたがために、右の如き誤れる判断を下したものなることを指摘したい。

すでに、昭和二十六年十二月二十四日付控訴人の当審第一回準備書面の「請求の原因」の一(機関車労働組合結成準備会の性格)に論じたように、機労準備会はすでに一個の労働組合であり、昭和二十六年一月十八日当時においては完全に国鉄労組を脱退した職員三千七百五十四名を有し、同年二月末には機関車関係職員の過半数たる四万四百六十二名を有するに至つた生成発展の途上にあつた権利能力者である。従つて、これらの機関車関係職員、少くとも同年一月十八日までの国鉄労組脱退者たる機労準備会員三千七百五十四名は国鉄労組によつてその利害を代表されて居らず、その後の右国鉄労組脱退機労準備会加入者も国鉄労組によつてその利害を代表せしむることを欲せざる者であつて、従つて、同年一月十八日の被控訴人と国鉄労組との単位決定の協議には参加して居らず、かえつて別に同年一月十八日機労準備会の被控訴人に対する単位申入によつて、その利害を代表せしめんと欲し、かつ、代表せしめたものであるから、被控訴人がこの協議申入に応じなかつたことによつて、控訴人は昭和二十六年度単位決定に当つては完全にその意思を除外されたのであり、同月二十三日の被控訴人と国鉄労組との単位決定は控訴人に対しては無効であることは当然である。この点に関する被控訴人の当審答弁書第一の(2)の主張は、右昭和二十六年度の被控訴人と国鉄労組との単位決定が有効であるとの誤れる結論を前提とするものであるから正当でない。従つて「単位が決定するとすべての職員はこれに属し、この単位に属さない職員はないように、単位の決定がなされなければならない」(原判決理由)のにもかかわらず、ここに昭和二十六年度においては被控訴人と国労との協議により決定され単位に属しない者すなわち控訴人組合が生じたのである。このこと、機労準備会準備委員八名中七名が右協議申入れの当時名義上国鉄労組の組合員であつたことは別個の問題である。

当時(昭和二十六年一月十八日)機労準備会準備委員八名中、加川重雄を除く七名の者が、名義上国鉄労組の組合員であつたことは、或はそれらの者が国鉄労組と機労準備会との二つの組合に属し、国鉄労組の統制に背いたものとして、国鉄労組に対して何等かの責任を問われることがあるとしても、機労準備会準備委員としては、申請書三の(3)に述べたように、昭和二十五年十一月十五日、十六日の機協全国委員会において、出席委員六十名中四十六名(七割強)の賛成をもつて結成された機労準備会の適法なる代表者として与えられたる権限に基いて(甲第三十号証)、前述のように被控訴人に対して単位決定の申入をしたのであるから、この申入は、昭和二十六年一月十八日当時の機労準備会員たる国労脱退者及びこれに引続き国鉄労組を脱退して機労準備会並びにその後身たる控訴人組合に加入した総ての組合員の代表として、その申入は、法律上完全に有効であることは、労組法第六条の規定を引用するまでもなく明白である。

被控訴代理人が当審において補充した陳述(昭和二十七年三月三日附答弁書)

第一昭和二十六年度における交渉単位決定の協議の申入は、法律上正当な申入とはいえない。

(1) 控訴人は控訴人組合の前身である国鉄機関車労働組合結成準備会は、昭和二十六年一月十八日当時において、適法に昭和二十六年度の交渉単位決定を受け得る団体であると主張し、同日同団体より被控訴人に対してなされた交渉単位決定の協議の申入に、被控訴人が応じないのは違法であると主張している。しかし、右協議申入の書面は「国有鉄道機関区全職員並びに本庁及び管理局機関車関係職員を代表し」と称して「札幌鉄道管理局小樽築港機関区石郷岡義一外七名」から被控訴人になされたもので、国鉄機関車労働組合結成準備会からなされたものでないことは申入書の記載自体によつて明らかであり、又、申請人等が果して「国有鉄道機関区全職員並びに本庁及び管理局機関車関係職員」の総意を代表して単位決定の協議申入をしたかどうかは当時不明で、本訴になつて始めて右は総意でなく機関車関係職員約七万人中の三、七五四人であることが判明した次第で、しかも右申請者中ほとんどの者が国鉄労働組合の組合員である者が申請したものである(甲第四号証と控訴人の昭和二十七年一月十六日附準備書面参照)。

当時国鉄労働組合は、控訴人が主張するような機関車関係職員のため交渉単位を設定する意思を有せず、同年一月二十三日被控訴人と協議して、公労法第十条所定の交渉単位を有効に決定したものであることは、原判決認定のとおりである。

しかして労働者が労働組合を結成する目的は、その団結の力で使用者に対して対等の地位に立ち、自分達の労働条件の維持改善を図るためであつて、労働者が労働組合を結成してそれに加入している以上、個々の労働者の意思は労働組合の団体意思に服するのが当然で、組合員は団結の力を発揮するためには組合の統制に服し、その支配に従わねばならないものである。この労働法上の原理は、交渉単位決定のための協議の場合にも当然あてはまることで、国鉄労働組合の組合員である前記申請人等が組合の意思に反し独自の立場で、当時被控訴人に対し交渉単位決定の協議の申入をなすことは、法律上許されないものであつて、被控訴人が前記申請人等の申入に応ぜず国鉄労働組合と交渉単位を決定したことは正当である。

(2) しかして単位が有効に決定された後において、ある職員の集団なり、組合なりが単位を決定するために協議の申出をなすということは、実は現に属している自分達の単位は都合が悪いから変えろという意味であつて、単位決定のための協議でなく単位変更協議の申出で、これは相手方に強制することができないもので、このことは原判決判示のとおりである。

本件においては昭和二十六年一月二十三日に被控訴人と国鉄労働組合との協議によつて、昭和二十六年度の交渉単位は有効に決定したものであることは前述のとおりで、その後控訴人の前身が発展して控訴人組合を結成し、被控訴人に対して交渉単位決定の申入をしたとしても、それは昭和二十六年度の交渉単位が有効に決定した後のことであるから、単位変更の申入であつて、控訴人は被控訴人に対して法律上この協議を強制することはできないものである。

(3) 次に控訴人は、昭和二十六年一月十八日当時における控訴人の前身である機関車労働組合結成準備会は、国鉄労働組合を脱退し、又は脱退しつつあつた機関車関係職員の集団で労働組合の成立要素をそなえていたものであるから、昭和二十六年度の交渉単位決定の協議と、その決定をうけ得る資格のある団体であるにもかかわらず、被控訴人はこれを無視して国鉄労働組合とのみ協議して右職員の集団と協議をせず、又、その単位の決定をしないのは違法であると主張している。しかし、昭和二十六年度の交渉単位に関し、当時被控訴人に対して協議の申入をなしたものは国鉄労働組合と(1)において述べた札幌鉄道管理局小樽築港機関区石郷岡義一外七名からの「国有鉄道機関区全職員並びに本庁及び管理局機関車関係職員を代表し」と称する者の協議の申入の二者だけであつて、控訴人が主張するような労働組合の実体を具備した「機関車労働組合結成準備会」から、昭和二十六年度の交渉単位決定の申入のあつた事実はない。しかして公労法第十条の職員側の協議の当事者となり得る職員の集団ないし組合は、その職員の集団ないし組合が成立し存在するという事実と、交渉単位決定の協議に関与する意思を有する事実とを、協議の相手方である公共企業体に、知り又は知り得べき状態におくことを必要とすると解すべきところ、昭和二十六年度の交渉単位を有効に決定した同年一月二十三日当時においては、控訴人の主張するような集団ないし組合は存在しなかつたものである。又、仮に存在したとしても、控訴人が主張するような集団ないし組合は被控訴人に対し、その存在と協議に関与する意思とを、被控訴人に知り又は知り得べき状態におかなかつたものである。従つてこの点に関する控訴人の主張は失当であり、又、控訴人の昭和二十六年度の交渉単位の決定をうける資格があるという主張は、集団ないし労働組合を結成すれば、必ずそれが交渉単位となるという議論で、その誤れることは次に述べるとおりである。

第二控訴人の、機関車関係職員又は控訴人組合をもつて交渉単位を設定しようという主張は、交渉単位決定の協議の本旨に反するか、或は、交渉単位制度の目的に反し、失当である。

(1) まず第一に、控訴人組合の性格を検討してみるに、控訴人組合は機関車関係職員をもつて組織しているというが、その組合員の職種は約四十種類にわたる職名を有する機関区職員の外に、控訴人組合代表者のような鉄道管理局において技術掛の仕事に従事する者や、電車区関係職員をも、その組合員としているもので、控訴人組合の組合員が、他の国有鉄道職員と労働条件を異にし、或は控訴人組合の組合員のみが労働条件において利害を同一にするという性格のものではない。すなわち、これら組合員の労働時間は、機関士、機関助士の如き蒸気機関車乗務員は一日平均七時間三十分の勤務に服するに反して、電気機関士や電気機関助士の如き電気機関車乗務員と電車運転士の如きは一日平均八時間の勤務に服し、その他の機関区職員や電車区職員は日勤制(一日八時間)一昼夜交代制(一日平均十二時間)等大部分の国有鉄道職員と同様の勤務時間に服し、労働時間においては完全に蒸気機関車乗務員としからざるものとは相異なり、又、資格、経験、義務においては、組合員の各職ともすべて異なる資格、経験、義務であつて、その間に同一であるものはない。又、賃金においては、蒸気機関車乗務員がトンネル内機関車乗務手当の支給をうける外は、賃金体系においては控訴人組合の組合員もその他の国有鉄道職員も殆んど同一であつて、控訴人組合の組合員のみが他の職員と異なる賃金制度をうけるということはない、ただ同一であるという点は大多数の組合員の勤務場所が機関区であるというだけである。このような組合員をもつて組織する組合は同じ又は同種の職種の者のみで組織する職種組合(クラフト・ユニオン)的性格ではなく、同一企業主の下で、又は同一工場事業場で働く労働者で組織する産業別又は企業組合或は会社組合(インダストリアル・ユニオン、カンバニー・ユニオン)的性格を有する組合で、国鉄労働組合と大同小異の性格を有する組合である(以上疎乙第四、同第五号証参照)。

(なお疎乙第五号証中左記規則規程を特に参照)

(1) 就業規則

日本国有鉄道就業規則         四二六頁

(2) 職種、義務

運輸運転従事員職制及び服務規則    六三七頁

その他六二八頁より八二二頁までの各職員の職制及び服務規程

(3) 資格、経験

日本国有鉄道職員及び試用員採用規程  四四七頁

機関区従事員採用規程         五一九頁

その他五〇一頁より五三五頁まで各職採用規程

(4) 賃金

日本国有鉄道職員職階給与規程     五四〇頁

日本国有鉄道職員特殊勤務手当支給規程 五五六頁

(5) 労働時間

日本国有鉄道職員勤務及び休暇規程   八三四頁

(2) しかして、一つの工場事業場内のすべての労働者に一般的に適用される労働条件は、画一的統一的に定められることが望ましいことであり、又、同じような労働に従事する労働者、すなわち、同じ又は同種の労働者には同一の労働条件をもつて律することが望ましく、かつ、このように定めることが労使間の紛争を除去し、その安定を図る方法であるとされている。そうするには、労働条件を定める労働協約が一つであること、換言すれば、団体交渉の当事者が労使双方とも一つであることが必要となつてくる。ところがこのような労働者が異つた組合に属している場合には、組合ごとに団体交渉をするという方式をとると、組合同志で勢力争いをしている場合や、組合の中に御用組合的のものがあると、同じ内容の労働条件を決めるということはなかなか実現困難である。

この欠点を除くために、団体交渉の効果を受ける労働者を一団としこの中から交渉をする者を選出することができれば、右のような欠点を除き一つの団体交渉ができ、その結果一つの労働協約ができることになる。

このことは、労働者にとつては労働戦線の統一となり、又、使用者にとつては同一内容の労働条件について組合ごとに団体交渉をする煩雑がなくなり、双方の利益となり、ひいては団体交渉の促進と円滑化を図る結果となる。

公労法の交渉単位制度は、このような目的のために生れたものであるから、この目的に反するような交渉単位の設定を相手方に要求することは不当な要求といわなければならない。

(3) 控訴人の機関車関係職員のみで交渉単位を設定するために協議せよという本訴請求は、機関車関係職員殊に機関区職員の労働条件が(1)において述べた如く、その労働条件において利害が同一であるといえない点から、又、控訴人組合に属せず国鉄労働組合に属している機関車関係職員が相当おり、しかもこれらの者の意思に反し、これらとなんら、交渉なしに控訴人と被控訴人との間のみの協議で交渉単位を設定することは、交渉単位設定の協議の本旨に反する主張で、いづれも失当として排斥されるべきものである。次に、控訴人組合員のみで一つの交渉単位を設定するために協議をせよという予備的請求は、控訴人組合の性格が前述のように職種組合の性格を有しない点から、又、控訴人組合の組合員と同一の職種の者が国鉄労働組合に属している事実からして、前述の交渉単位制度の目的に反し、その不当であることは明らかである。

第三交渉単位制度は憲法に違反しない。

控訴人の「単位制の違憲性について」と題する主張の内容は、「公労法の規定は解釈運営の仕方によつては憲法に違反するものである」とか、「公労法第十条の規定をもつて、専門的労働者職種別労働者の意思を無視しうるものの如く解するならば、憲法第二十八条に違反する」とか、或は又「交渉単位は客観的要件によつて客観的に決定されるものである。しかるに、交渉単位を公社側の恣意的意慾によつて、これを無から有を作り出し、又は有を無たらしめ否認し得るものであると解するならば、それは公労法そのものが憲法に違反す」等そのすべてが不確定な仮定事実を前提としての主張である。このような具体的事実に関しない主張は、裁判の対象となり得ない主張であるばかりでなく、かかる独自の仮定を前提として、公労法が憲法に違反すると主張することは、不当であるといわなければならない。

第四被控訴人が、昭和二十六年一月二十三日国鉄労働組合と交渉単位決定の協議の際なした附属協定事項は、控訴人の主張のような性格のものではない。

控訴人は、被控訴人が昭和二十六年一月二十三日国鉄労働組合と昭和二十六年度交渉単位決定の協議の際なした附属協定事項中の「やむを得ない事情のあるときは改めて協議する」という事項は、国鉄労働組合が控訴人の債務者としてなしたものであるとか、或は控訴人を第三者として、そのためになした契約であるとか主張するが、本協定は被控訴人と国鉄労働組合との間にとりかわされた諒解事項であつて、その諒解事項の如き事由の発生した場合は、協定当事者である被控訴人と国鉄労働組合との間に改めて協議をするという協定であつて、国鉄労働組合が控訴人の債務者としてなしたものでもなければ、又、控訴人に協議をなすべき権利を与えることを目的としたものでもないことは、本件協定の内容からして明らかであるから、この点に関する控訴人の主張も失当である。

以上何れの点よりするも、控訴人の主張は失当で、排斥さるべきものである。

(疎明省略)

理由

控訴人が、本件仮処分を求める理由として主張する事実関係の要旨は、次のとおりである。

第一

一、被控訴人は、日本国有鉄道法によつて設立された公共企業体であり(以下公社という)、控訴人が被控訴人の職員中公共企業体労働関係法(以下公労法という)第四条第一項但書第二項同法施行令第一条別表第一、第二に定められたものを除く機関車関係職員約六万七千七百名中約四万二千四百名を以つて、昭和二十六年五月下旬に結成され、同年六月七日労働大臣所定の証明をえて、同月十二日所轄登記所において登記手続を完了した労働組合であること(この事実は被控訴人も認めている)。

二、被控訴人公社の従業員は、昭和二十二年六月に各鉄道管理部の地域別に支部を有する全国的な単一組織である国鉄労働組合(以下国鉄労組という)を組織し、昭和二十五年十月改組して現在に至つていること(この事実は弁論の全趣旨から、被控訴人において明らかに争つていない)。

第二

一、機関車関係職員は、国鉄労組の組織の中にあつてその諮問機関である職能別協議会の一としての機関車協議会(以下機協という)に属し、この協議会は、機関車系統組合員の特殊事情について協議し、国鉄労組本部の諮問に応え、意見を述べることなどが認められていたが、その会を開くには国鉄労組中央委員長の同意を得なければならず、団体交渉を行うにも、右本部に拒否されればできないことなど、全く自主性を与えられていなかつたこと、機協としては、従来、これに属する職員は他の公社職員と全く労働条件と職場環境を異にし、百八十種にも細分しうる国鉄労組組合員約四十七万人を単一組織の下に拘束することは、多数の職種の特異性による利益の主張が十分に貫徹することができないので不合理であるとし、そのため、従来機関車関係の問題については、専門的知識ないし理解がないため団体交渉が十分に行われなかつたとして不満をいだいて来たこと。

二、そこで、機協は、昭和二十四年四月以来数回国鉄労組全国大会において、機協に機関車関係職員のため団体交渉を行うに適当な単位を与えられたいと提案したがいづれも否決された。

よつて、昭和二十五年十一月機協はその全国委員会において、機関車労働組合結成準備会(以下準備会という)の設置を決定し、準備委員として石郷岡義一、瀬戸敏夫、北野隆外五名を選出し、組合結成の活動を始め、昭和二十六年四月一日現在においてこの傘下に結集された機関車関係職員は合計四万二千四百四十一名に達し、国鉄労組に残留し新機協再建に参加する者は二万七千七百九十五名に及び、機関車関係職員は二派に分裂するに至り、準備会は前記のとおり、昭和二十六年五月下旬に控訴人組合を結成するに至つたものであること(以上一、二の事実は甲第二、三号証の各一、二、第十二号証の一、二、第十八、十九、二十号証、第二十四ないし第二十六号証により疎明されている)。

三、右準備会は、昭和二十六年一月十八日準備委員石郷岡義一外七名の名をもつて公社に対し、機関車関係職員のため、公労法第十条による単位決定のための協議の申入をしたのであるが、公社は準備会とはなんら協議せず、国鉄労組中央委員長と協議し、同月二十三日に昭和二十六年度における単位として全国単位、合同単位、地方単位等の決定を協定し、同日附属了解事項の五として「やむを得ない事情のあるとき、(I公社側に組織の変更のあつたとき、II組合側に組織の変更のあつたとき、III機協問題が解決したとき、を意味する)は改めて協議する」こととして、同日これを労働大臣に届け出た。よつて、準備会は同月三十一日労働大臣に対し、右単位設定の協定は準備会との間には一回の協議も行われずになされたものであるから準備会との関係においてはその効力のないもので、とうていこれを承認できない旨を申し立てた。公社は、同年二月三日に至り、同年一月三十一日附で、準備会の前記協議の申入に対し、「国鉄労組と準備会との紛争が解決していない、関係職員一般の動向が十分に把握し難い、右の理由によつて昨年度の単位を継承することが適当である。直ちに新しい単位を設定することは必ずしも適当であるとは、認められない」と回答してきた。準備会は、同年二月上旬から下旬にかけ国鉄労組との間に種々折衝したが、円満妥結の見込がなく、この間機関車関係職員は続々国鉄労組から脱退して準備会に加入し、ついに、その過半数に達したので、同月二十七日公社に対しその事情を述べ重ねて単位設定の申入をした。しかるに、公社は準備会と一回も協議することなく再び国鉄労組と協議して、同年三月二日公労法第十一条に定める昭和二十六年度の交渉委員を決定して同日労働大臣にこれを届け出た。準備会は同月五日労働大臣に対し右交渉委員の決定は、準備会との間に一回の協議も行われずになされたものであるから、準備会との関係においては無効のものであるとして、公労法第十二条により異議の申立をした。公社は同年三月十日口頭をもつて「国鉄労組が準備会の単位設定を承認しない、機関車関係の職員の動向把握が困難である、機関車関係職員のための単位設定をしない方が円満に遂行しうる、昭和二十六年度の単位設定はすでに労働大臣に届出済であるから、本年度においては変更できない。昭和二十六年二月二十五日までに届出がなされなかつたために、公労法第十一条第二項以下の規定により、単位設定並びに交渉委員選出の手続は、一切労働大臣において決定することになつている」との理由によつて、準備会の申入を拒み同月十三日右最後の理由を摘示した文書をもつて回答した。よつて、準備会は、三月十五日公社に対し、国鉄労組の承諾は単位設定の要件でないこと、二月二十五日までに交渉委員の届出がなかつたとしても、公社と準備会との間に協議して単位を設定するも差支えのないことなど、公社の回答が理由のないものであることを指摘し、再考を促した。

なお、昭和二十五年末までには三千六百余名(準備委員加川重雄を含んでいる)のものが国鉄労組を脱退して準備会に加入している(この脱退の期日の点は原判決の事実摘示を訂正したものである。控訴状並に控訴人の昭和二十七年一月十六日附準備書面の一)。(この三の事実中国鉄労組脱退の点は甲第二十二、二十三号証乙第三号証により疎明せられているし、公社が準備会からの単位設定の申入に応じなかつたことは後に説明する。以上の点を除いた以外の三の事実は、被控訴人において認めている)。

四、準備会は、前記のとおり、昭和二十六年一月十八日公社に対し単位設定の協議の申入をした後、国鉄労組中央闘争委員会との間に機関車関係職員のため単位の設定を認めるように折衝を続けてきたところ、参議院議員内村清治外四名のあつせんにより、同年三月二十七日、二十八日準備会側準備委員石郷岡義一外十二名と国鉄労組中央闘争委員長斎藤鉄郎外七名との間に協議がなされ、準備会側は「機協は分裂を回避するため、単独組合結成中止を含み異議申請を取下げる、本部は機協の誠意を諒承し機関車交渉単位を認める、大同団結のため双方から小委員をあげ全国組織検討委員会に提出し作成するが、誠意をもつて国鉄の単一を守る」との調停条項を承認し、同月二十九日労働大臣に対する異議申立を取り下げた。しかるに、同年三月三十一日右の調停は打切られ、国鉄労組は四月二十日準備会を分裂者として切捨を宣し、新機協再建を指令し、同月十四日十五日残留機関車関係職員の代表者全国大会を開催した。ここに、準備会と国鉄労組との間の妥協はついに成立するに至らなかつたのである(この事実中異議申立を取下げたことは、被控訴人においてこれを認め、その余の事実は甲第二十一、二十七号証により疎明されている)。

第三

控訴人は、以上の事実に基いて、仮処分を求める理由を概括し、次のような法律上の主張をしている。すなわち、控訴人は準備会が昭和二十六年一月十八日公社に対し単位設定のための協議を申入をしたことによつて取得した協議権の確認及び交渉単位確認の本訴を提起する準備中であるが、右の権利保全のため、本件の仮処分を求める、というのである(原判決の事実摘示中控訴人の主張第三の一、三)。よつて、次に、各個の法律上の主張について判断する。

一、控訴人の主張によると、公社は、控訴人の前身である準備会の単位決定のための協議の中入にも拘わらず、これと協議しないのであるが、控訴人は公労法第一条の趣旨に従い公社の正常な運営に寄与すると共に、機関車関係の職員については特別な職種であることに伴う労働条件を擁護する必要に迫まられており、国鉄労組の交渉委員によつては、従来の経緯や現状に鑑み、機関車関係職員の十分な権利、利益を擁護することはできない。よつて、控訴人は公労法第十条第一項により公社に対し交渉単位の決定を受ける権利があり、かつ、右単位を決定する方法として公社に対し協議を求める権利を有する、というのである。

思うに、公共企業体においては、労働組合法による一般の労働組合と異なり、団体交渉はもつぱら公共企業体を代表する交渉委員と公共企業体の職員を代表する交渉委員とにより行われるものであり(公労法第九条)、交渉委員以外の者は公労法に規定する団体交渉を行うことができないこととし、団体交渉を行う主体を明確にし、団体交渉と関連して生ずる紛争を防止しようとしているのである。そして、右の交渉委員の指名又は選出については、その前提として団体交渉を行うに適当な単位を決定しなければならないのであつて、この単位により交渉委員を選出する公共企業体の職員の範囲及び団体交渉の効果の及ぶ範囲が定められるのであるから(公労法第十条)、右のような単位の決定は、公共企業体においては、団体交渉を行うに必要な前提要件をなしているものといわなければならない。この単位の決定は原則として公共企業体とその職員又はその組合とが協議によつてすべきこととなつている(前同条)。そして、団体交渉をすることが権利として認められ、使用者は正当な理由なくして、労働者の代表者と団体交渉を行うことを拒むことができないのであるから(憲法第二十八条労働組合法第一条第七条第二号)、公共企業体としては、その組合又は職員から、団体交渉の前提要件となつている交渉単位決定の協議の申入を受けたときは、これに応ずる義務があるものと解しなければならないことは、容易に理解しうるところである。

すなわち公共企業体としては協議義務の内容として、公共企業体における労働関係の平和を維持し、公共企業体の正常な運営を最大限に確保し、その能率を発揮して公共の福祉を増進し、擁護することができるように(公労法第一条)、又、単位内に包含せらるべき職員の職種、資格、経験、義務、賃金、労働時間及びその他の労働条件(公労法第十一条第二項)において利害を同一にするように考慮を払い、必要に応じてこれらに関する資料を調査考究し、どのように交渉単位を決定するのが相当であるかについて互いに意見を述べて話し合いを進め、協定に達するように誠意をもつて努力しなければならないものである。単位決定の協議の申入に対しては、以上のような考慮を払い、協議が成立するように誠意ある態度をもつて協議に当れば、たとい、協定に達しなかつたとしても、信義に従つて協議がなされたものであるから、協議に応ずる義務はその本旨に従つて履行されたものと解しなければならない。

これを本件について見るに、昭和二十六年一月十八日準備会は準備委員石郷岡義一外七名の名をもつて公社に対し、機関車関係職員のため単位決定のための協議の申入をしたのに、公社はこれを拒んで国鉄労組とのみ協議して同月二十三日昭和二十六年度の単位を決定したことはさきに認定したところである。この準備会の申入当時これに属する職員は、国鉄労組を脱退していた者を除きその余はすべて国鉄労組に属しその組織の中に包含されていたものであるから、これらの者は国鉄労組とはなれて別個独立に単位決定のための協議を申入れ得るものとは解せられず、公社は国鉄労組と協議すれば足り、国鉄労組所属の職員とは、たといそれらの者が右準備会を結成している者であつても、協議すべき義務はないものと解すべきであるが、右申入当時少くとも三千六百余名(昭和二十五年末現在)は国鉄労組を脱退して右準備会に加入していたものであるから、これらの者に対する関係においては、公社は協議の申入に応ずべき義務があるものというべく、国鉄労組との協議はすでにこれを脱退した者に対する関係においてはなんらの効力もないものというべきである。この意味において公社は準備会の昭和二十六年一月十八日の協議の申入によつて、少くとも準備会所属職員中当時すでに国鉄労組を脱退していた者に対しては右申入に応じて協議をしなければならない義務を負担したものである。

単位決定の協議の申入によつて生ずる権利及びその内容は右に説明したところにつきている。控訴人のいうように、準備会は公社に対し単位の決定を受ける権利があるものということはできない。又、控訴人のいうように、準備会所属の職員が労働条件において利害を同一にしているとしても、それが交渉単位となるには協定が成立するか又は労働大臣の決定にまたなければならない(公労法第十一条第一項第一号)。これらの方法によらないでも、団体交渉を行うに適当な組合又は職員の集団であれば、当然に単位は客観的に存在しているもので、協定はこれを確認するに過ぎない、という見解は正当とはいえない。

従つて、控訴人の本件仮処分申請の内協議を求める請求権を本案訴訟とし、これを保全することを目的とするもの(原審以来求めているもので、控訴状による拡張以前の請求、即ち、単位を決定するために協議せよ、との請求)以外のもの、すなわち、「被控訴人は控訴人が被控訴人所属の機関車関係職員のために団体交渉を行うに適当な単位の決定を受ける仮の地位にあることを認めよ」との部分及び「被控訴人は、控訴人が控訴人所属組合員のため、団体交渉を行うに適当な単位である仮の地位にあることを認めよ」との予備的請求の部分は、控訴人が現に交渉単位であるとし、交渉単位確認の訴を本案訴訟とし、これを保全することを目的とするものであるから(控訴状の記載)、この部分の仮処分申請は理由がない。

よつて、以下の説明は、右に述べたような内容を持つた協議を求める請求権だけを取扱つている。

二、控訴人は、公社は前記のとおり国鉄労組との協議により単位を決定したがこの決定は準備会が協議の申入をしたにかかわらずこれと協議せずにしたものであるから、準備会に対する関係においては無効である。又、公労法第十条第二項の一月三十一日という単位届出の期限は、その後の単位決定及びこれに基づく届出を法律上無効とし又は禁止するものではない、と主張している(原判決の事実公示中控訴人の主張第三の二)。この見解は準備会員中国鉄労組を脱退した職員に対する関係においては正当なものとして是認することができる。すなわち、本件において公社は、右のように、準備会から昭和二十六年一月十八日単位決定の協議の申入を受け、これにより少くとも準備会所属職員中国鉄労組脱退者に対しては協議に応じなければならない義務を負担したものであつて、公社が同月二十三日国鉄労組との協議により単位を決定しても準備会員中国鉄労組脱退者に対する右の義務が履行されていないのであるから、このような単位の決定をしたことにより、準備会が協議の申入をしたことによつて公社に対して取得した協議の請求権が失われる道理がない。又、準備会が協議の申入をしているのに、公社がこれに応ぜず、これを無視して国鉄労組と協議して単位を決定しても、この単位決定はその協議に関係していない準備会員中国鉄労組脱退者に効力を生じないと解すべきことは法理上当然である。次に、協定された単位は毎年一月三十一日までに労働大臣に届け出なければならないことになつている(公労法第十条第二項)。一方、交渉委員の任期は毎年四月一日に始まり翌年三月三十一に終るものである(同法第十四条第二項)。そして、交渉単位は、団体交渉の際における交渉委員の代表権の範囲や団体交渉の効果の及ぶ範囲を明確にしようとするものであるから、交渉単位の決定は交渉委員の指名又は選任の前提をなし、かつ、これと不可分の関係にあるものとみなければならない。従つて、一度適法に定められた交渉単位は、一年間は特別な理由なくしては、これを変更しない趣旨なりと解するのが相当である。しかし、これは単位の決定が適法に行われた場合のことであつて、本件におけるように、単位の決定について公社が協議すべき準備会員中国鉄労組脱退者と協議せず、従つて、これに対しては単位決定の効力が生じない場合においては、右の単位決定の届出期限の経過した後においても、準備会と協議して単位を決定し届出をなすことを妨げるものではないと共に、又、協議をなす義務を免れしめるものともいえない。以上の見解と異なつた被控訴人の主張は採用することができない(原判決の事実摘示中被控訴人の主張の三)。

三、控訴人は、交渉単位制はその解釈運営の仕方によつては憲法第二十八条に違反することになるから、この違反にならないように解釈しなければならない。このためには、団体交渉権は組合又は組合員の信頼する代表者を通じて行使されなければならないのであつて、もしも、信頼しない代表者によつて、団体交渉権が行使されることを強制されるならば、それは団体交渉権の剥奪又は否認となることを意味する、従つて、いかなる場合においても、控訴人組合に属する機関車関係職員の意思は単位の決定については尊重せらるべきであつて、この意思に反して機関車関係職員の単位を否認することはできない、と主張している。しかし、協議による単位の設定はあくまでも当事者の意見が一致し協議が成立することを必要とするのであつて、協議が成立しなければ、単位が設定されたことにはならない。控訴人組合の主張するところが交渉単位となるのに適当であるのに、公社がこれを認めなかつたとすれば協議は不成立となり、単位は協議によつては設定されない。この場合労働大臣は、法律が示している基準に照し控訴人組合の主張するものをもつて交渉単位とするのに適当と認めれば、これを単位と決定することになるであろう。もしも、労働大臣が、法律が示している基準に違反して単位を決定したとすれば、それは違法な行政処分として出訴の対象となりうるわけである。従つて、公労法の規定している交渉単位の制度は単位が適当に定められることにより、団体交渉が適当に行われるように、又、単位の決定に伴つてその代表者である交渉委員が適当に選ばれるように保障しているのであるから、このような交渉単位の制度は、団体交渉権を否認又は制限するものとして憲法違反の制度であるということはできない。

第四

被控訴人は、控訴人の主張に対し、次のように抗弁しているので、これに対して判断する。

一、被控訴人は、控訴人が本件仮処分によつて保全しようとしている「団体交渉を行うに適当な単位」を決定するために、協議を求める権利というようなものは、民事訴訟手続によつて保護を求める資格のある権利ということはできない、と主張する(原判決事実摘示中被控訴人の主張一)。しかし、元来、権利があつても、民事訴訟制度によつて保護されていないというのは、きわめて稀であつて、特殊の理由のある例外の場合に限られている。交渉単位決定のために協議を求める権利が民事訴訟制度による権利保護に値しないものと論断するような特殊な理由はないのである。ただ、この権判は、前に説明したとおり、信義と誠実とに従つて協議の申入に応じ、単位の決定に適するかどうかについて話合いを進めることという内容の給付を請求し得るにとどまるのであるから、民事訴訟法の認めた権利保護の方法の内のいかなる方法によつて保護を求めうるか、殊に、控訴人が本件で求めているような仮処分命令を求めうるかどうかは、別に考えねばならない問題である。

二、次に、被控訴人は、本件においては、控訴人との間に交渉単位の決定について協議をしたから、控訴人の主張は失当である、という(原判決事実摘示中被控訴人の主張二)。しかし、この点について被控訴人のいうところは、被控訴人は、準備会が昭和二十六年一月十八日及び同年二月二十七日に被控訴人に対し協議の申入をしたのに対し、被控訴人は同年一月三十一日及び三月三十一日の二回に、控訴人のため単位を設定することはできないと回答している、というのであつて、このように相手方の申入を拒絶すると通知しただけでは、単位決定のための協議をしたものとはいえない。相手方の申入どおりこれを承認するというような場合であれば、ただ承認する旨を通知するだけで十分であろうが、そうでない限りは、いかなる単位が労働条件について利害を同一にするか等について、互に意見を交換して協定に達するように、話合を進めなければならないものである。

三、なお、被控訴人は次のように主張している。すなわち、準備会は、被控訴人が国鉄労組と協議して決定した単位設定に対し、昭和二十六年一月三十日労働大臣に対し異議の申立をなし、次いで、準備会は同年三月五日交渉委員の指名に対しても異議の申立をしたが、その後三月二十八日これを取下げたから、この取下げによつて交渉単位は有効に確定したものである、というのである(原判決事実摘示中被控訴人の主張三の末段)。右取下げの事実は控訴人が認めているところである。しかし、公社と国鉄労組との協議により決定された単位の設定は、この協議に関与しなかつた準備会員中少くとも国鉄労組を脱退していた者に対しては本来効力を及ぼさないものであるから、これに対してその効力を及ぼすためには、準備会から公社又は労組に対して単位設定について承認が与えられなければならない。そして、交渉委員の指名に対する異議の申立が取下げられれば異議申立ができなくなるのは当然であるが、この取下げのあつた事実から当然には単位の設定を承認したものということはできない。取下げをなすに至つた経緯について控訴人のいうところは、前に認定してあるとおり、昭和二十六年三月二十七、八日準備会側と国鉄労組側との間に協議がなされ、準備会側は「機協は分裂を回避するため単独組合結成中止を含み異議申請を取下げる、本部は機協の誠意を諒承し機関車交渉単位を認める、大同団結のため双方より小委員をあげ全国組織検討委員会に提出し作成するが誠意を以つて国鉄の単一を守る」との調停条項を承認し、右のとおり、同月二十九日労働大臣に対する異議申立を取下げた。しかるに、同年三月三十一日右調停は打切られ、国鉄労組は四月二十日準備会を分裂者として切捨を宣し、新機協再建を指令し、同月十四、十五日残留機関車関係職員の代表者全国大会を開催した。ここに、準備会と国鉄労組との妥協はついに成立するに至らなかつた、というのである。従つて、「機関車交渉単位を認める」ということは明らかに留保されていたのであるから、準備会が労働大臣に対する異議申立を取下げたとしても、公社と国鉄労組との協議により決定された交渉単位の設定を承認したことにはならないのである。

四、被控訴人は当審において、抗弁を附加し、次のように主張している。

昭和二十六年度における準備会からの交渉単位決定の協議の申入は、その表示の仕方が正確でないから、法律上正当な申入とはいえない、というのである(当審における答弁書第一)。右の申入書である甲第四号証によると、被控訴人のいうとおり、「国有鉄道機関区全職員並びに本庁及び管理局機関車関係職員を代表し」「札幌鉄道管理局小樽築港機関区石郷岡義一外七名」と表示されている。従つて、準備会からの協議の申入としては正確な表示ではない。しかし、単位決定の協議の申入は、それ自体だけで直ちに一定の法律上の効果を生じ、その目的を達して終う解除や取消などとは異り、申入によつて、当事者は準備会の主張するものが果して交渉単位とするに適当かどうかを調査し、話合いを進め、協定に達するように努めるものであるから、その話合は、申入をした準備会に属する者の範囲や、申入をした者の代表資格についての調査のようなことまでも含まれているものといわなければならない。従つて、右のように、本件の単位決定の協議の申入は、準備会からの申入としてはその表示の仕方において正確かつ完全ではなかつたのであるが、準備会からの申入として協議に入れない程のものではないから、準備会からの申入として効力のないものということはできない。

五、次に被控訴人は、当審において、機関車関係職員の職種は約四十種にわたる職名を有する機関区職員の外に、鉄道管理局において技術の仕事に従事する者、電車区関係職員などを含んでいるので、これらの職員は、他の国鉄職員と労働条件を異にし、或は控訴人組合の組合員のみが労働条件において利害を同一にするものとはいえないこと及びその他の理由から、準備会又は控訴人組合からの単位決定の協議の申入は失当である、と主張している(当審における答弁書第二)。この主張は単位決定の当否に関するものであるから単位決定のための協議に入ることを拒む理由とはならない。単位決定の協議の申入は、公共企業体の労働組合又は組合に属しない職員の集団であれば、できることであつて、これに制限は加えられていない。協議の申入をしたものが、労働条件において利害を同一にし交渉単位を認めるのに適するかどうかは、協議をしてみて後にきまることであるから、協議に入る前に、申入をしたものが労働条件において利害を同一にしていないというような理由によつては、協議の申入自体を拒みうるわけのものではない。もし、準備会又は控訴人組合の主張するものが交渉単位として認めるのに適当でないとすれば、それは、協議の結果交渉単位として認められないことになるだけのことである。

第五以上説明したところによれば、控訴人が本件仮処分申請事件において保全せらるべき請求として主張している権利関係としては、準備会から昭和二十六年一月十八日公社に対して交渉単位決定の協議の申入をしたことによつて、当時国鉄労組を脱退していた準備会員の取得した協議の請求権だけであつて、その他の権利関係についてはその存在が疎明されていないのである。

そして、単位決定の協議に応ずべきことを請求する権利は、公共企業体の労働組合又は組合に加入していない職員の集団が有する権利であつて、組合に属する職員は、団体交渉権と同様に、組合と離れてこれとは別に、右の権利を有しえないものと解するのが正当である。従つて、右の協議請求権は、準備会員によつて設立された控訴人組合の成立した後においては、その成立前、準備会当時に取得された権利ではあるが、その行使の当時に準備会員が組合員となつている以上、その組合員によつて行使せらるべきではなく、団体交渉権と同様に、控訴人組合によつてのみ行使せらるべきものと解するのが相当である。従つて、控訴人組合が、右昭和二十六年一月十八日準備会が単位決定の協議の申入をしたことによつて生じた権利を行使することは是認されなければならない。

しかし、右の請求権保全のため、控訴人が求めているような仮処分を命ずるについては、このような応急措置をなすことを必要とする事情がなければならない。しかるに、控訴人が交渉単位決定の協議を求め公社と協議を遂げた上、単位を認める協定に到達したとしても、又、これに基いて交渉委員が定められ、この交渉委員により団体交渉が行われたとしても、これにより果して控訴人組合の組合員はいかなる労働条件について、いかなる程度の改善が期待されるというのか、又、その期待せらるべき待遇の改善は、仮処分命令により仮りに実現せられなければならない程緊急の必要に迫まれているものか、という点についてはいづれも明らかにされてはいないのである。

控訴人は、機関車関係の職員は労働条件や職場環境において特殊の事情があるのであつて、従来国鉄労組の組合員四十七万人を単一の組織の下に拘束していたので、専門的知識や理解が不足し、右の特殊性による利益の主張が十分に貫徹することができないで、不合理のままに残されていた、と主張しているが(原判決事実摘示中控訴人の主張第二の一)、このような一般的の主張だけで、具体的内容とその実現についての緊急の必要性とを伴つていない主張によつては、本件で控訴人が求めているような仮処分命令を発するについて必要な事情があるものということはできない。よつて、単位決定の協議を求める請求権の保全を目的とする本件仮処分命令申請は理由のないものとして、排斥しなければならない。

第六控訴人は中間判決を求める申立をなし、その理由は本件訴訟において終局判決をするに熟さないとしても、その前提となる争点中、独立した攻撃又は防禦方法で重要なもの(中間判決を求める請求の趣旨に掲げたもの)については、判決をするに熟するに従つて順次速かに中間判決を求める、というのである。

しかし、中間判決をなす場合の独立した攻撃方法(防禦方法は被告側から提出するもの)というのは、判決を受ける申立を維持するために主張された事項が数個ある場合に、その内の一つが認められれば、それだけで他の主張された事項とは関係なしに、申立が認容される場合(例えば、所有権確認の訴で数個の所有権取得原因を主張する場合)をいうのである。控訴人が本件の中間判決を求める申立においていうところは、この中間判決をなす場合には当つていない。のみならず、元来、民事訴訟法第百八十四条が明示しているように、この場合に中間判決をなすかどうかは、裁判所がきめることであつて、裁判所が相当と認めた場合に中間判決をするのである。法律は当事者に対し中間判決を要求する申立をなすことを認めてはいないのである。又、控訴人の右中間判決を求める申立がいわゆる先決的確認の申立(民事訴訟法第二百三十四条)の趣旨であるとしても、この申立は訴訟の進行中における訴の提起(仮処分の申請)であつて、一つの訴訟の進行中にこれと併合して他の訴訟を提起するところに特色があるだけのことである。この場合は請求の併合が生ずるのであつて、その一つについて判決をすれば一部判決を生ずるだけであつて中間判決を生ずるものではない。いずれにしても、控訴人の本件中間判決を求める仮処分の申立は、訴訟法上許されないものとし、不適法として排斥を免れないものである。

従つて、原審が本件仮処分申請を理由のないものとして却下したのは正当であつて、これに対する控訴は理由がないから、棄却すべきである。又、当審において原審の申請の趣旨を拡張した部分(申立一の一部分及び申立二の予備的請求の部分)は理由のないものとして、却下すべきであり、なお、中間判決を求める部分は、不適法として却下すべきである。よつて、当審における訴訟費用の負担につき、民事訴訟法第八十九条第九十五条の各規定を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 藤江忠二郎 薄根正男 浅沼武)

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